FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

マリオンの壁/ジャック・フィニイ

マリオンの壁 (角川文庫)

マリオンの壁 (角川文庫)

 ジャック・フィニイの作品は、過去への愛情に満ち、しばしば人やその魂は時間を超える。この『マリオンの壁』でも変わらない。かつて若くして女、しかもハリウッドで認められる寸前で死んだ女優の亡霊が、現在に生きる女性に乗り移るという形で、魂が時を超える。
 主人公夫婦がある家に引っ越してきてから不思議な出来事始まるので、幽霊屋敷ものと言って言えなくはないが、時間を扱ったファンタジーとしての色彩が強い。またクラシック映画への愛情に満ち満ちている。
 名古屋創元倶楽部で、中村融の編んだアンソロジーは面白いと聞き、ちびちびと読んでいる。「ロマンティック時間SF傑作選 時の娘」のジャック・フィニイ「台詞指導」の解説で、この『マリオンの壁』が紹介してあったので手に取った。
 フィニイの作品の中で飛びぬけて出来がいいわけではないが、なかなか面白い。

↑マイベストはC・L・ムーアの『出会いのとき巡りきて』