なんでもない一日/シャーリイ・ジャクスン
シャーリー・ジャクソンは『丘の屋敷』や『ずっとお城で暮らしてる』などゴシック小説の名作で知られる作家だ。いま挙げた二作は長編小説だが、彼女は短編もうまい。すごくうまい。
もし「後味の悪い短編コンテスト」というコンテストが存在するならば、首位を狙うこともできそうな「くじ」という神のごとき(むしろ悪魔のごときか?)短編もある。
『なんでもない一日』にはバラエティに富んだ作品集で、23の短編小説と5つのエッセイが収録されている。
多彩な作品が収録されており、「くじ」のごとく読んだあと嫌な感じになる作品もあるが、城館や幽霊屋敷を舞台にした恐怖譚、怪談の類もあり、また素直に良い話、小粋な話がある。巻末に集められたエッセイは、思春期の少年というものはどの時代、どの国でも変わらないものだと認識させてくれる。
しかしながら当方の神経に突き刺さったのは、やはり最初に挙げたような類の短編である。
ベストは「逢瀬」、「なんでもない日にピーナツを持って」、「おつらいときには」か。いや「悪の可能性」も捨てがたい。どれも「くじ」ほど強烈ではないが、紙で指の表面を傷付けたときのような嫌な痛みがいつまでもじくじくと心に残る。幽霊屋敷ものの怪談「夏の日の午後」もいい。
まさにシャーリイ・ジャクスンのファンのための秀作短編集。
- 作者: シャーリィジャクスン,Shirley Jackson,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/08/01
- メディア: 文庫
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