FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ミステリー・アリーナ/深水黎一郎

 2015年度(2015年に読んだ)ミステリの国内外ベスト3が自分の内側で決まりつつある。海外ミステリはクリスチアナ・ブランド『薔薇の輪』、サイモン・ベケット『出口のない農場』、そしてルース・レンデル『街への鍵』の三冊である。
国内ミステリは久住四季『星読島に星は流れた』、鳥飼否『死と砂時計』、そしてこの深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』の三作である。むろん海外ミステリも、国内ミステリも、これらの作品を上回るものが出てくれば嬉しい。
 この『ミステリー・アリーナ』、作者の問題作にして一番の傑作かもしれない。
 まことにユニークな多重解決もののミステリである。中途で示される解答はややバカミス寄り。もっともそれだけでは終わらないうえに、きちんとした……と言っていいものか悩むが……「謎と解決」が読者の前に示される。
 驚いたことに、テレビ番組のクイズ形式で小説は進んでいく。
 まず司会者が問題(「嵐の山荘」ものの殺人事件の冒頭)が提起し、複数の解答者たちが我先にと「解答」を口にする。しかし次の章では問題の続きが読まれ、新たな事実が発覚し、その意見は否定されていく。
 結局、この「嵐の山荘」ものの殺人事件の犯人は誰なのか。そしていやに高額な賞金が掛けられたこのテレビ番組とは一体なんなのか。
 解答者たちがやけに焦って「正解」を口にしたがる理由、そしてミステリ小説だから、という以外の理由で解答者たちが真実に辿り付けない理由が分かる終末が良かった(後者については、司会者が解答者の答えを聞いてから、あえてそれを否定するような証拠を編み込んだ次の章を作成している)。
 この司会者、誰か一発殴れと思っていたから、この結末爽快だった。
 傑作。

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↑どちらもすごく面白い