FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

その罪のゆくえ/リサ・バランタイン

[rakuten:book:17510828:detail]

 この優れたミステリの中では、二種類の時間が流れている。
 一つは現実の時間。事務弁護士ダニエルが現在扱っている事件。八歳の少年ベンが殺され、十一歳の少年セバスチャンが容疑者として拘束され、その裁判の流れ。
 もう一つは、幼いダニエルが里親ミニーと農場で暮らしていた過去の時間。劣悪な環境で育ち、本人も時折凶暴性を発揮するダニエルは、ドラッグと酒を過剰摂取する実母を慕いながらも、いつしかミニーに対し強い愛情と信頼を抱くようになっていた。
 しかし大人になったダニエルは、ミニーを裏切り者と呼んでいる。そしてその裏切りゆえ、ミニーとは縁を切ったのだと。
 時間が二つ流れていくのと同じく、二つの謎が読むものを引き付ける。
 本当にセバスチャンは、ベンを殺したのか。
 もう一つ、ミニーがダニエルに対して行った「裏切り」となにか。
 前者は最後の最後まで焦らされ、気を揉むこととなる。
 しかし後者の「裏切り」に関しては、正直に言って肩透かしである。思わずミニーに肩入れしたくなるが、「ダニエルを幾度となく裏切り続けた実母を、ミニーというしっかりとした養母と出会いながらも求めずにはいられない気持ち」を描いていて切ない。
 主人公の行いすべてに対し、「あなたの気持ちは分かるが、その行動には疑問がある」と言いたくなる。特に最後に分かった事実に関して、ああいう行動は止めて欲しかった。