FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

街への鍵/ルース・レンデル

 2015年5月に亡くなったルース・レンデルの作品である。と言っても遺作ではなく、1996年の作品である。
 美女メアリは、白血病患者のため骨髄を提供し、きれいな肌に傷をつけたということで、恋人(作中で元恋人に降格)アリステアが暴言と暴力を受けることになる。
 メアリは家を出て、骨髄を提供した男性レオに会いに行く。レオは繊細な青年で心惹かれるが、どこか心を許さないところがあった。 一方メアリのあずかり知らぬところで、路上生活者連続殺人事件が起こっていた。
 全編に渡って不穏な空気が漂っているが、レンデルの作品としては救いがある方である。ラストもちょっとしゃれている。
作中メアリはアリステアにつきまとわれることになる。このアリステアの嫌な奴ぶりが変にリアルで、読んでいて鬱になる。日本人でも絶対こういう奴はいるだろう。
 もう一つ洒落ているものがある。主人公格の一人、メアリが働いているのが、アイリーン・アドラー博物館、シャーロック・ホームズボヘミアの醜聞』に出て来るアイリーン・アドラーを中心に据えた博物館である。おそらくレンデルが創造した博物館だろうが、展示物が興味深い。クリムト風に描かれたアイリーン・アドラーの絵画、見たい。
 気長に買い続けるので。もっとルース・レンデル/バーバラ・ヴァインの作品が出版されますように。