FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

歪められた旋律/ジェニファー・ヒリアー

 面白さを説明しにくい小説である。下手を打つと、すぐにネタバレになってしまいそうだ。
 助手でもある恋人(というよりただの火遊びの相手)イーサンと手を切り、本命の銀行投資家モリスと結婚しようとした大学の女性教授シーラ。イーサンは別れ話に納得できず、シーラを脅すような言動を取るようになった。
 と、ここまでならありふれた二時間ミステリドラマである。そしてそれはシーラが悪いよ、イーサン頑張れと思う人間もいることだろう。一応シーラがイーサンと付き合っていたのにも事情がある。
 しかしシーラは心理学の学者であるにも関わらず、イーサンが人格障害者だと見抜けなかった。イーサンのふるまいは、単に愛する女性に捨てられた男のそれではなく、狂気と重度の犯罪性を帯びたものになった。イーサンから逃げるためにシーラは戦い、シーラを守るため、モリスも戦う。
 と、ここまでならありふれたサイコサスペンス(ロマンス付き)なのだが、そうでもないない。ネタバレになってしまうから詳しく書けないが、あるとことで待ち受けている思わぬ不意打ちにある人は驚き、あるいはにやりとするはず。
 スピード感があって勢いよく最後まで読める。
 秀作。
 訳者のあとがきから察して、次の巻にはあの人が再登場するんだろうか。