歪められた旋律/ジェニファー・ヒリアー
面白さを説明しにくい小説である。下手を打つと、すぐにネタバレになってしまいそうだ。
助手でもある恋人(というよりただの火遊びの相手)イーサンと手を切り、本命の銀行投資家モリスと結婚しようとした大学の女性教授シーラ。イーサンは別れ話に納得できず、シーラを脅すような言動を取るようになった。
と、ここまでならありふれた二時間ミステリドラマである。そしてそれはシーラが悪いよ、イーサン頑張れと思う人間もいることだろう。一応シーラがイーサンと付き合っていたのにも事情がある。
しかしシーラは心理学の学者であるにも関わらず、イーサンが人格障害者だと見抜けなかった。イーサンのふるまいは、単に愛する女性に捨てられた男のそれではなく、狂気と重度の犯罪性を帯びたものになった。イーサンから逃げるためにシーラは戦い、シーラを守るため、モリスも戦う。
と、ここまでならありふれたサイコサスペンス(ロマンス付き)なのだが、そうでもないない。ネタバレになってしまうから詳しく書けないが、あるとことで待ち受けている思わぬ不意打ちにある人は驚き、あるいはにやりとするはず。
スピード感があって勢いよく最後まで読める。
秀作。
訳者のあとがきから察して、次の巻にはあの人が再登場するんだろうか。