記憶探偵と鍵のかかった少女/ホルヘ・ドラド監督
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久しぶりに面白いミステリ映画を見た。映像はきれい、ヒロインはきれい、出てくるお屋敷もきれい。
最後の最後で待っているあの展開は「絶対やるだろうな」と思っていたが、そこに至るまでの過程には振り回された。
他人の記憶を読むことができる超能力探偵ジョン・ワシントン。妻の自殺で精神に痛手に負っていた彼に上司が仕事を回してきた。少女アナの記憶を読み、心の傷を癒し、摂食障害を治してほしいというものだった。
対象は特異な知能、特異な才能を持つ十六歳の美少女アナ。資産家の母と継父に半ば軟禁されるように暮らす彼女は、継父が主張するように邪悪なのか、それとも天才ゆえに、そしてコミュニケ―ションが苦手ゆえに他人に理解されづらいのか。
やがて屋敷である犯罪が起こる。
好きな言葉に、ケイト・モートンの文章の一部で「記憶は信用ならないこと、偏向した歴史としての性格を帯びること」というものがある。記憶探偵の証言も、世間から絶対的に信用されているわけではなく、裁判などでは物証より弱いとされている。なにせ人間の記憶にはその人間の主観や単純な誤解などが入っている場合があるから。
アナの記憶よりわかりづらいのがアナ本人で、証言する人間の数だけアナの人物像がある。記憶探偵に対するアナの友好的な態度は単純に自分の無罪を示したいのか、あるいは裏があるのか。
ひたすら暗い迷宮に誘われていくような物語。
秀作。