FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

その腕のなかで永遠に/スーザン・エリザベス・フィリップス

その腕のなかで永遠に (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

その腕のなかで永遠に (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(ロマンス・コレクション))

 スーザン・エリザベス・フィリップスの新境地、ゴシックサスペンス風のロマンス小説である。お約束として最後に「屋敷は炎上」する。しかしこの新境地、かなり微妙なものである。ゴシックホラーには優雅さや陰惨さが付き物だが、根から強靭で爽やかな彼女とこの分野はいま一つ合っていないように感じられる。
 基本的なストーリーは生活に窮したヒロインがかつて暮らしていた町に戻り、初恋の男性と再会し、元鞘に戻るというもの。ここに大邸宅、少女時代のヒロインの暗い記憶、屋敷で暮らすヒロインを襲う危機また危機、背徳的な愛情、そして愛しているのに信頼できないヒーローが出てくる。
 複数の人形に自己の心情を語らせるヒロイン(ポール・ギャリコ『7つの人形の恋物語』みたいだ)は新鮮だった。
 締めはしっかりとハッピーエンド。
 彼女のロマンス小説を初めて読むという人に感想を聞いてみたい一作だった。