FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

厭な物語

 この『厭な物語』……やや長くなるが、『後味の悪い物語』と置き換えても通用するような十一の短編が揃えられたアンソロジーである。表紙からして、すでになのかしら厭なものが漂っている。
 つぶらな青い目、柔らかそうな頬と唇、おそらくはキューピー人形はあるいはその類の幼児の人形だろうが、その顔が横半分だけこちらを見下ろしているさまは、なんとも言えず不気味で、しかも小馬鹿にされているような印象を受けるのだ。
 収録されているのはパトリシア・ハイスミス「すっぽん」やシャーリイ・ジャクスン「くじ」、フレドリック・ブラウン「うしろをみるな」などすでに読んだ古典的作品も多いが、初めて読み強く心に残ったのはフラナリー・オコナー「善人はそういない」。
 実は名前だけは知っていたものの読んだことのない作家だったのでが、収録作が強烈だった。あらすじだけを書いてもこの凄まじさはよく伝わらないであろうから、あえて書かないが読後はしばらく気分が滅入る。
 オコナー本人の経歴にも、熾烈なものがある。

フラナリー・オコナーウィキペディアはこちら
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%82%B3%E3%83%8A%E3%83%BC

 フラナリー・オコナーは他の作品も読もう。
 またトップを飾るアガサ・クリスティーの「崖っぷち」には、ちょっと脱力。このタイトルには、ヒロインの精神状態と合わせて二重の意味でつけられているのだろうが、秘密を持つものと、それを追い掴んだものが崖の上で対決という、現代日本のミステリ劇場のクライマックスのような光景が繰り広げられる。
 ミステリの女王もこんな場面を書いていたのか。

↑続巻あるんだ!