偽証裁判/アン・ペリー
アン・ペリーの<ウィリアム・モンク>シリーズの新刊である。
原作ではシリーズ第五作、邦訳では『見知らぬ顔』、『災いの黒衣』、『護りと裏切り』に続く四作目に当たる。
前作『護りと裏切り』がとても面白かったので、本作も期待していた。そして期待通りに面白かった。なにせ舞台はホームグラウンドを離れたスコットランドだし、主人公格の一人へスターが冤罪でニューゲイト監獄に入れられて看守に虐められるし、被害者の一族はみなあやしいし、フローレンス・ナイチンゲール御本人も登場するし。
しかしこの『偽証裁判』、肝心かなめの謎解きの場面が、いささか唐突な印象を受けるのだ。この犯人、この動機で構わないのだが、もう少し前振りなり伏線なりが欲しかった。
一八五七年の秋、看護婦へスターはエディンバラの名家の女主人メアリ・ファラリンに雇われ、彼女の旅に同行することになった。知的で快活なメアリに、へスターは敬意と好意を抱くが、メアリは突然亡くなった。そして奪われたのはメアリの生命ばかりではなかった。彼女の黒真珠も奪われ、なんとも不名誉で悔しいことにエスターにはメアリ殺しと窃盗の、二つの罪を被せられることになる。
謎解きは唐突ながら、追い詰められ自棄になった犯人が見せるある冷酷な行動な行動にはぞっとする。
余談ながら、ナイチンゲールシリーズ第四作『A Sudden, Fearful Death』にも、ナイチンゲールは登場するらしい。
アン・ペリーの<ウィリアム・モンク>シリーズの翻訳が続きますように。
翻訳ミステリーシンジケート(http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/)で紹介されている、未訳の<ウィリアム・モンク>シリーズは以下の通り。
シリーズ第四作『A Sudden, Fearful Death』
(http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20101019/1287414438)
シリーズ第六作『Cain His Brother』
(http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20120119/1326928490)
シリーズ第七作『Weighed in the Balance』
(http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20120925/1348527754)
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↑傑作