FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

MAMA/アンディ・ムスキエティ監督

 製作総指揮を務めたのがギレルモ・デル・トロだったので期待していたのだが、これは可もなく不可もない、ありふれたホラー映画だった。
 「新居への引っ越し」→「悪霊出現、子供が危ない」→「大人が対策を立て、過去の因果関係が明かされる」→「ハッピーであろうとなかろうとエンデイング」というよくあるパターンを忠実になぞった作品だ。
 タイトルにある通り、母性の強さとその裏側のおぞましさを書いた映画だ。
 ヴィクトリアとリリ―、幼い姉妹を巡る、母親と母親の対決を描きたかったのだろうが、森の中にいた「ママ」はとにかく、もう一人の母親が、子供達の叔父の恋人という、姉妹とは迂遠な関係であるアナベルであるということに、いささか不自然さを感じる(子供が欲しくて仕方ないのに妊娠できず、血の繋がりはないものの姉妹の境遇を憐れんで手を差し伸べた女性といった設定だったら分かるが、そうでもない)。
 それにしてもこのアナベル、いかに愛する恋人のためとは言え、そして成り行き上とは言え、殺人犯の娘、いかなる手段でか五年間を山の中で過ごし、すっかり野生児と化した幼い二人の女手一つで世話する……彼氏のルーカスは悪霊にやられ、わりと早い段階で入院という名の中途退場する……とは、タフな女性である。
 また母性を強調するがゆえ父性の描写が少ないのかもしれないが、妻と共同経営者を殺し、二人の娘をも手にかけようとした父ジェフリーと、消えた姪を探し続け、いかなる困難をも恐れず姉妹を育てようとした叔父ルーカスとの絆や関係ももっと描いて欲しかった。この兄弟、どちらも同じニコライ・コスター=ワルドーが演じているところからして、一卵性双生児なのだろう。実際叔父に会った姉妹が、父親と間違える場面がある。
 もう一度同じことを書くことになってしまうが、可もなく不可もない作品。