ダリオ・アルジェントのドラキュラ/ダリオ・アルジェント監督
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最初にこの作品について聞いたとき、最初に浮かんできたのは「今更?」というものだった。この「今更?」はアルジェント監督が選んだ、ドラキュラという素材、つまりブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』に向けられている。
ゴシックホラー小説の傑作であり、多くの吸血鬼ものの創作物の源流となったことは言うまでもない。しかしこれまで映画のみならず舞台や漫画に至るまで幾度となく使われてきたものであり、テーマを広く「吸血鬼」ものにするならともかく「ドラキュラ」ものにするならば、ある程度ブラム・ストーカーの原作に沿った作品にしなければならない。それは物語の展開や登場人物の造形に制約を受けることだ。
内心で「どんな作品になるのか」と首を傾げていたが、実際に見てみると、傑作および怪作の多い彼の作品の中では、良くも悪くもけれん味のない、まっとうな映画だった。
舞台はトランシルヴァニア、森に囲まれた古城に住まうのはドラキュラ伯爵。伯爵は田舎町を発展させて功労者で、町の人々から敬意を受けている。近頃、この町では森や町で若い女性が殺されていき、町には不吉な雰囲気が漂っている。ドラキュラ伯爵は司書として、城にジョナサン・ハーカーという男性を招く。美貌の妻ミナも少し遅れて、夫のいる土地を踏むつもりだった。
けれん味に欠けると前述したが、ちょっと珍しい特徴もある。ダリオ・アルジェントのホラーとしては例外的に、女性よりも男性の方が遥かに数多く、残忍に殺されていくのだ。
また狼や鳥など伯爵の変身シーンも楽しい。しかし、ひっかかったのは「巨大カマキリ」。ブラム・ストーカーの小説は読んだことがあるはずなのに、これは出てきたかどうか、情けないことに覚えていない。出てきた瞬間、怖いというより笑ってしまった。
残念なのは女優さんは美女が揃っているのに、男性がそうでもないことだ。せっかく吸血という官能的な場面がよく出てくるのに尚更である。あともう一つドラキュラ伯爵には、一度で良いので裏地が真紅の黒いマントをまとって欲しかった。
最初にこの作品でダリオ・アルジェントに触れたという人間は、他の映画を見たら、『フェノミナ』や『サスペリア』などそのあまりの作風の違いに驚くのではないだろうか。
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↑個人的には、『サスペリアPART2/紅い深淵』がアルジェントの最高傑作だと思う。
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