摩天楼の密室/ジョー・バニスター
摩天楼の密室/ジョー・バニスター/塩川優【1000円以上送料無料】
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ヴィンチェンゾ・ナタリ監督『キューブ』、ジェームズ・ワン監督『ソウ』の大ヒット以来、閉鎖された、そして恐ろしい罠が待つ部屋に、お互いがまったく知らない男女が複数閉じ込められ、やがて何者かによって傷付けられ、殺されていく……というシチュエーションの創作物、特に映画が、世の中にあふれかえったが、その質は玉石混合で、玉でない方が圧倒的に多かった。
この『摩天楼の密室』は、登場人物達が一応自分の意志で集まっているので、上の条件には多少反するが、石多めの玉石混合のグループの中では、地味ながら輝く玉である。
脱出不可能である空間に閉じ込められた男女が殺されていく、というお話は本格ミステリの伝統的な設定の一つである「嵐の山荘」の変奏曲だが、正体不明のなにものかに襲われたり、建築中のホテルの最上階に人々が集まった目的が、集団心理カウンセリング(しかも自分探しがテーマ)といううさんくささが、前述のような現代のホラー映画の雰囲気を醸し出している。
ややネタを割ってしまうが、これはきっちりとしたミステリ小説で、謎と解決もきれいなものである。
「自分探し」という集団心理カウンセリングを受けるため、ペントハウスに集まった、職業も年齢もばらばらの男女七人。彼らはみずからの意志で来たつもりだったが、しかし、そこにはある人間の意図が絡んでいた。
やがて彼らは閉じ込められたことに気付く。そして自分達の間にある共通点があることを知り、みずからの意志で足を運んだはずの、このカウンセリングを計画した人間とその目的に悩み、恐れを抱く。やがて殺人事件が発生する。
とんでもないラストが待っていたらどうしようと思っていたが、そんなことはなかった。
サスペンス性ばっちりの秀作。
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