FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

煌めく氷のなかで/ヴィヴェカ・ステン

 『静かな水のなかで』、『夏の陽射しのなかで』に続く<サンドハムン・シリーズ>第三作。
 『夏の陽射しのなかで』が、犯人はあの人で いいのだが、そこに到達するまでがかなり唐突だったので、第三作を読むのが不安だったが、この『煌めく氷のなかで』は良かったので一安心。
 それにしてもスウェーデンのミステリ作家、たとえばこのヴィヴェカ・ステンやカミラ・レックバリ(シリーズ六冊目『人魚姫』で読むのを止めることにした)などは、シリーズの幕も引き方がうまい。次の巻に思わず興味をかきたてられるような展開を見せてから幕を閉じている。
 そしてもう一つ、スウェーデンのミステリの特徴でもある、警察の捜査以外のストーリー部分(主役達の私生活やら、犯人の犯行以前の一生やら)がしっかり書き込まれている。ここの書き込みの細かさゆえ、犯行の痛ましさがより際立っている。
 厳寒の地と化したサンドハムン島。三か月前に失踪した少女の手掛かりを探す警察官の前に、人体の一部が現れる。この事件には、ある人間の人生が大きく絡み合ったていた。
 「訳者のあとがき」にもあるよう、前巻のネタバレや主役達の私生活の変化が描写があるため、シリーズ刊行順に読むことをお勧めする。
 なんとも言えないほど、やり切れない余韻を残す一作。

静かな水のなかで

静かな水のなかで

↑この頃の面白さはどこに行ってしまったんだ、レックバリ……