緋の収穫祭/S・J・ボルトン
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恐怖と、閉ざされた地方の謎めいた儀式や秘祭は相性がいい。
ホラー小説で例を挙げればこの作品ともタイトルが少し似ているトマス・トライオン『悪魔の収穫祭』、ホラー映画で例を挙げればミシェル・マックスウェル・マクラーレン監督『呪い村436』、ロビー・ハーディ監督『ウィッカーマン』などが思いつくが、もっといくらでもあるだろう。
ちょうど作中で、新たに町にやってきた司祭ハリーが精神科医エヴィを「クリストファー・リーの出てくる怪奇映画を見よう」とデートに誘う場面がある(そして怪奇映画を見ることは断られる)のだが、それは前述のロビー・ハーディ監督『ウィッカーマン』かもしれない。クリストファー・リーが、ある閉鎖的な島の領主であり、ある儀式の主たる役割を演ずるからだ。
『三つの秘文字』、『毒の目覚め』に続くS・J・ボルトンの邦訳三作目。これが一番面白い。一応人間しか出てこないが、伝統的な怪奇小説の雰囲気が濃密に漂っている。「欠けていく月」、「血の収穫祭」、「死人の日」といった不吉で美しい章タイトルもいい。こういった創作物の典型として、新たにこの地にやってきたものが想像を絶する恐怖に巻き込まれる。
「血の収穫祭」と呼ばれる伝統的な儀式が残る英国の小さな町。幼い少女の墓からあるはずのない、幼い子供の遺体が二体発見された。それが恐怖と、狂気と、鮮血の嵐の幕開けだった。忌まわしい過去が、町の、そして住人の過去が、主に新参者達に襲い掛かる。
長年閉ざされた教会を再開させるためにやってきた司祭は、子供達の亡骸の謎に頭を抱え、精神科医は我が子を失った患者をなんとか癒そうとし、一家で引っ越してきた少年は幼い弟妹の周囲に現れる謎めいた人影に怯える。
優れたゴシックサスペンス、あるいはゴシックホラー(と呼んでも差し支えないと思う。登場人物達が見せる狂気が怖い)。
秀作。
- 作者: トマストライオン,広瀬順弘
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