秘密/ケイト・モートン
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ケイト・モートンの四作目(邦訳としては『リヴァトン館』、『忘れられた花園』に続く三作目)。掛け値なしに面白かった。これまでに邦訳された著者の作品を楽しめなかった人でも、これは読めるという人はいるのではないだろうか。
少女だったローレルは母親をごく平凡な女性だと考えていた。ローレルが十代半ばのとき、眼前で母がある男を殺すまでは。その男は、連続強盗事件の容疑者だったから、母の行動は正当防衛としてお咎めなしとなった。だがローレルは知っていた。母に刺される直前、男が母の名前を呼んでいたことに。偶然現れた強盗ではない、その男と母親は知り合いだった。だがローレルはこの件についてはずっと口を噤んでいた。
やがて半世紀が流れ、ローレルはイギリスを代表する大女優となり、母は死の床に瀕していた。ローレルはあのときの事件、そして母が隠し持ってであろう秘密を探ろうとする。
そして読者の前に、戦時下のロンドンにおける若かりし頃のローレルの母の姿、その恋と友情と犯罪と、それゆえ登場人物が抱えることになった重い秘密が描かれる。
バーバラ・ヴァイン『アスタの日記』を連想させられる文芸的サスペンス。ローレルの母が抱えることになった秘密が落とす影に長く、娘のローレルが熟年女性になるまで尾を引くのだ。
ネタバレになるから詳しく書けないが、この物語の締め方が実に心憎い。
傑作。まだ邦訳されていない゛The Distant Hours゛(これも現在と過去を行ったり来たりする物語なんだろうな……)に期待。
ルース・レンデル/バーバラ・ヴァインの小説もどこかが出版してくれないものだろうか。
- 作者: ケイトモートン,栗原百代
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2012/05/10
- メディア: 文庫
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