領主館の花嫁たち/クリスチアナ・ブランド
作者がクリスチアナ・ブランドだから、一筋縄ではいかないゴシック小説だろうな、と予想していたが、外れた。
古い館、宿命、亡霊、一族にまとわりつくあるもの、と道具立てもばっちり、王道を実にまっすぐ歩んだようなゴシックロマンで、かえって驚いたぐらいだ。
作者は本格ミステリの名手だが、この小説のジャンルはそれではない。ただし、その要素はところどころに感じられる。むろんブランドらしい意地悪さもある。
エリザベス朝の貴族の姉弟が、かつて悲劇的な運命を辿った美しい館。ヴィクトリア朝の現在では、妻を失い悲嘆にくれる若い父親と、愛くるしい双子の娘が暮らしていた。くだんの姉弟の悲運から、一族にはある呪いがかけられているとされている。やがて、館に顔と心に深い傷を負った女性家庭教師が現れる。
やがて目には見えざる糸に操られたように、この家庭教師の運命はなるようになり、館もまた辿るべき運命を辿る。
当方はこの種の小説(大きな屋敷の中で、女性が危機と恐怖にさらされる)が大好きなので面白く読んだが、ジャンルのファン以外でブランドの愛読者にはどう受け取られたか聞きたいぐらいだ。
正統派ゴシックロマン。