FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

丘/スーザン・ヒル

丘 上 (ヴィレッジブックス)

丘 上 (ヴィレッジブックス)

丘 下 (ヴィレッジブックス)

丘 下 (ヴィレッジブックス)

 2014年に出版される翻訳ミステリの新刊として、スーザン・ヒルの新刊を選んでくれたヴィレッジブックスの編集者さんに感謝したい。もちろん、翻訳者の加藤洋子さんにも。
 スーザン・ヒルと言えば、日本において暗黒児童文学『ぼくはお城の王様だ』(レジス・ヴァルニエ監督が『罪深き天使達』というタイトルで映画化しているが未見)や、イギリスの自然や彼女自身の出産にまつわるエッセーも出版されているものの、『黒衣の女 ある亡霊の物語』のみが際立って知られており、またジェームズ・ワトキンズ監督によって映画化されたことが、その傾向にいっそうの拍車をかけていた。
 ちょうど日本で『時の娘』のみが抜きん出て知名度が高かったジョセフィン・テイと似ている。テイの他の作品が次々と訳されたよう、スーザン・ヒルの他の作品ももっと訳されますように。
 さて、本書である。
 ヒルという名字の作家が、『丘(ヒル)』という題名の小説を書いたと、誰でも考えそうなことを書いてみる。もっとも原題は、“ The Various Haunts of Men“ だから、作者と同じ“ Hill“ ではない。
 いかにもイギリスの女性作家らしい、優雅繊細な筆致で描かれたサスペンス小説で、ゴシックホラー小説の傑作『黒衣の女 ある亡霊の物語』を著した作者らしく、細かな風景描写の中に、言いがたい不気味さや忌まわしさを含んでいる。
 ある丘の周囲で、人々が次々失踪していく話だから、刑事達が主役とは言え、なにも知らずに読んだ人は、ミステリなのかホラーなのか悩むかもしれない(ミステリです)。
 真犯人はともあれ、読者にとって、最後の最後でかなり意外な展開が待っている。これにはかなり驚かされた。似たような趣向で、同じイギリスの女性作家の……いや、ネタバレはここまでにしておかないと。
 シリーズの次回作が楽しみ。訳され、出版されますように。

黒衣の女 ある亡霊の物語〔新装版〕 (ハヤカワ文庫NV)

黒衣の女 ある亡霊の物語〔新装版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ぼくはお城の王様だ

ぼくはお城の王様だ