フラテイの暗号/ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン
[rakuten:book:16667977:detail]
こういうミステリが読みたかった。素朴さがかえって新鮮な味わいを醸し出しており、古典文学を読んでいるような大らかさが感じられる。
一九六〇年のアイスランドの孤島。無人島に転がる男性の死体を発見したのは、アザラシ猟にやってきた少年だった。どうやらこの男性は、乗っている船の事故なにかでこの島にたどり着き、そのまま餓死した様子だった。デンマークの著名な学者だった彼は、意味不明の事柄が書かれた紙切れを所有していた。やがて島では人騒がせな事件が続く。この事件は、アイスランドのサーガを集めた『フラテイの書』と関わりがあるようだった。
英米仏のミステリに読み慣れた当方には、北欧ミステリの登場人物の名前は覚えにくい。北欧ミステリの中でも、フィンランドとアイスランドの作家の作品がとくに覚えにくい。この『フラテイの暗号』は素敵なミステリだったが、何度も登場人物のリストと睨めっこしながら読み進めた。
作者ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソンの作品はドイツでの人気が高く、本作もドイツ語からの翻訳とのこと。本作と同じくガラスの鍵賞(北欧五カ国の作家が書いた優れたミステリに贈られる賞)にノミネートされた、゛Engin Spor゛(痕跡のない家)も読みたい。