清須会議/三谷幸喜監督
あの白塗りの顔面は当時の風俗をそのまま表現しただけかもしれないが、お市の方はもっと美しく作って欲しかった。演じている鈴木京香が美人なんだから、もっときれいにできたはずなのに。
そしてなぜ中谷美紀演じる寧だけ素顔のままなのだ。彼女の飾らない人柄を示しているのか、あるいは他の女性達に比べ、出自の身分が低いことを表しているのか。
明智光秀とその軍によって、織田信長とその嫡子、織田信忠が討たれた。
織田家の後継者を決めるべく、清須の地に、羽柴秀吉、柴田勝家、丹羽長秀、池田恒興らが集まり、話し合いがもたれることとなった。
それぞれの思惑が渦巻くなか、もっとも互いが互いを警戒していたのは、羽柴秀吉と柴田勝家だった。二人の対立は織田家の後継者選び(というか自分達自身の権力争い)に関することばかりではなかった。二人はともに、織田信長の妹、お市の方に恋していたのだ。
したたか極まりない秀吉と、一本気な熱血漢、勝家の人格のコントラスト、そして「権力争いには秀吉が勝って勝家が負け、お市を巡る争いでは勝家が勝って秀吉が負ける」という結末の対比が際立っている。
私はこの作品で、『清須会議』という会議が実際にあったことを初めて知った。歴史に詳しい観客ならば、この会議で「織田家の後継者」に誰が選ばれるのか、タイトルを聞いただけで分かるのだろうが、当方は知らなかったので、あの結末に十分意外性を感じることができた。
そして、誰が権力を掴んだかを象徴するラスト近くのあの場面には、「うまい!」と思わせたが、このネタはすでに江戸時代には知られていたようだ(リンク先 ネタバレ注意http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E6%B4%B2%E4%BC%9A%E8%AD%B0 )
もっとも「清須会議」という会議の存在は知らなくとも、この先、誰が天下人となり、どちらがどちらを滅ぼすかはさすがに知っている。お市の方のその後の運命も。そしてこの清洲会議で政治的に勝利した側も、老いたのちには後継者問題が一つの原因として、一族滅亡の道を歩むむことも。
単純で直情径行の柴田勝家を参謀として支えようとするも、彼の衝動的な行動に悩まされる丹羽長秀を小日向文世が、煮ても焼いても食えない羽柴秀吉を、大泉洋がよく演じている。
傑作。