劇場版タイムスクープハンター 安土城最後の一日/中尾浩之監督
映画泥棒が五人に増えたあたりから、映画館に足を運ぶたびに流される予告編を見て気になっていた。検索してみて、初めてドラマシリーズの映画版だと知った。
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しかし、当方のようにいきなり映画を見たという人間にも楽しめる作りになっている。
未来から来た時空ジャーナリストが、時を遡って特定のある時代、ある対象を相手に密着ドキュメントと称して取材をする。「未来を決して変えてはいけない」という大前提のもと、特殊な交渉術(催眠術のようなものらしい)を使い、取材対象に協力してもらう。
要潤演じる時空ジャーナリスト、沢嶋雄一は決して教科書には載らないような事件、人物を常に追い掛けている。
今回は本能寺の変の直後、混乱のさなかにある京都の庶民の人々を取材するつもりでいた。焼け出された人々の救援活動をする元織田方の武士矢島に密着取材をしていた沢嶋は、矢島のもとに炎の本能寺から命からがら逃げ出してきた豪商島井が訪ねてきたときから、沢嶋たち時空ジャーナリストと、タイプワープ能力を悪用、歴史的美術品などを盗んでは歴史を変えてしまう組織との戦いに巻き込まれていくことになる。島井は幻の茶器「楢柴」を手にしており、組織はそれを狙っていたのだ。組織から「楢柴」を、そして歴史を守ろうとする行為は、結果として安土城がなぜ焼失したのかという謎の解にも繋がっていた。
幾度もの危機とそこからの脱出をうまく繋げ、観客を飽きさせないエンターテイメントに仕上げている。
安土城消失というスケールの大きな謎を追いたい新人時空ジャーナリスト夏帆と、決して歴史には名前が刻まれないであろう人々を追う沢嶋、伝説的な名品「楢柴」と村の人々の心の拠り所である「お石様」、そして言うまでもなく織田信長や明智光秀など著名な戦国武将と、矢島やかつては矢島の同僚だったと思しき野盗、その野盗に苦しめられる村の人々と言った人々との対比が効いている。
結局安土城がなぜ焼失したのかという直接の原因を、最後の最後でスタッフロールとともに流れる映像で見せていくのも洒落ている。
良質のジュブナイルSF小説を思わせ、子供から大人まで楽しめる秀作。
ドラマ版を調べてみて、室町時代の闘茶を扱った回や、明治時代のうさぎバブルを扱った回が面白そうだ。いつか見たい作品として、頭の中にメモをする。