氷の娘/レーナ・レヘトライネン
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妊婦の警官が大きなお腹を抱えて捜査に挑むという設定は、コーエン兄弟の傑作ミステリ映画『ファーゴ』を思わせる。
フィンランドでは知らぬ人がいないという<マリア・カッリオ>シリーズ、原作では五作目、邦訳では二作目にあたる作品である。この『氷の娘』から紹介した方が人気が出たのではないかと思われるほど、邦訳第一作の『雪の女』に比べて充実した内容になっている。
フィンランドのフィギュアスケート界にようやく現れた、十六歳のホープ。殺人事件の被害者ノーラ・ニエミネンはマリアも公演を見たことがある有名人だった。彼女は、スケート靴のエッジで何度も殴られ、殺されていた。
練習熱心だったうえ、おそろしく気が強かったというノーラの人間関係は決して平穏ではなかった。彼女自身コーチや協会理事と対立することはあったし、ノーラの母親ハンナの不倫相手はストーカーとしてハンナにつきまとっていた(フィンランドにはいわゆる「ストーカー規制法」がないので、関係者は苦労していた)。
熾烈な出世争いに身を揉みながら、胎児への愛と心配を抱えながら、そしてノーラ殺し以外にも、妊婦にはきつい児童虐待事件を捜査しながら、マリアはノーラを殺した犯人を追う。
フィギュアスケートへの愛が全編に渡って感じられ、それが物語にいっそうの面白さを与えている。それもそのはず、著者レーナ・レヘトライネンは熱心なフィギュアスケートのファンで、共箸でフィギュアスケートの解説書を出版したこともあり、優れたスポーツ関連書籍に贈られる賞を受賞したこともあるという。納得。
次に訳される作品はなんと孤島もの。マリアは刑事として向かうんだろうか、それとも旅行者として行って事件に巻き込まれるんだろうか。期待が高まる。
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