FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

誘惑の女神に囚われて/ジョー・ベヴァリー

 武田ランダムハウスジャパンからシリーズ第一作『真珠は涙にぬれて』、第二作『侯爵の憂鬱な結婚』、第三作『クリスマスに天使が降りて』が出版されていた「無頼同盟」シリーズ、改めて幻冬舎ラベンダーブックスからお目見えである。めでたい!
 ジョー・ベヴァリーと言えばアナ・キャンベルと並び、ロマンス小説界の、才能ある異端児だ。両方とも「ロマンス小説」というジャンルにおいてぎょっとするほど、ヒロインがひどい目に遭う(アナ・キャンベルの作品の中では、ヒーローも辛酸を舐める)。ジョー・ベヴァリーの小説においては、ヒロインを虐待する人間は主に家族で、しかもその描写がいやに生々しいので鬱になる。
 ヒロインが家族から虐待されるという点においても、その内容が王道から大きく外れるという点においても、この『誘惑の女神に囚われて』は変わりない。
 あらすじだけ書き出すと、クラシカルな官能小説のようだ。しかし切ないロマンス小説である。
 まだほんの少女のとき、親に売られるようにして嫁いだ、遥か年上の夫によって性的な技巧を仕込まれた稀代の美女セリーナ。未亡人になり、ようやく解放されたと思っていたら、今度は兄によって、前夫と似たような男に叩き売られそうになった。貴族の愛人となるか、高級娼婦となった方がまだましだと判断したセリーナは、家を出る。そして偶然出会った、女を知らない美青年の貴族の若者ミドルソープ卿を誘惑するのであった。
 官能小説ではなく、ロマンス小説です。 
 さらに言うなら、誘惑というより、逆……なのだが、それでもロマンス小説である。しかも面白い。
 出版社さん、ロマンス小説ではないけれど、必ず買うので武田ランダムハウスジャパンから出版されていたルイーズ・ペニーの本格ミステリ、ガマシュ警部シリーズを出してくれませんか〜。

真珠は涙にぬれて (RHブックス・プラス)

真珠は涙にぬれて (RHブックス・プラス)

侯爵の憂鬱な結婚 (RHブックス・プラス)

侯爵の憂鬱な結婚 (RHブックス・プラス)