FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

アーサー王の墓所の夢/アリアナ・フランクリン

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 歴史小説として、冒険小説として、そしてもちろんミステリとして、重層的に楽しめる「女医アデリア」シリーズ、第三作目。前作『ロザムンドの死の迷宮』も良かったが、この『アーサー王墓所の夢』もとても良かった。見つかった人骨が本当に伝説の英雄とその妃のものなのかどうか、そして失踪した友人達の行方、凶悪な盗賊との戦いや真犯人の仕掛けた罠など、読みどころはたくさんある。
 十二世紀、イングランド地震と火災、二度もの災厄に見舞われたグラストンベリー修道院。その墓地から、二体の白骨が見つかった。伝説のアーサー王とグィネヴィア王妃のものではないかと、期待したイングランド国王ヘンリー二世は、イタリア出身の女医アデリアに鑑定を依頼する。
 アデリアは、幼い娘や、いつもの仕事仲間や、女友達エマの一行とともに骨の鑑定のため旅立つ。ところが、エマの一行とははぐれたうえに行方知らずになってしまう。
 目的地に着いたところ、アーサー王伝説は、単にイングランドの人々を町に引き寄せて懐を潤す飯の種ではなく、住人達の精神的な支柱でもあった。そして二体の人骨はすぐに正体は分からないもの、ざっと見ただけでも、とてもひどい殺され方をした被害者達のそれだった。
 いつもの通り、出発前、道中、そして目的地到着後、といつもの通り、散々な目に遭うアデリア一行の道中記であり、謎解きの事件簿でもある。前作『ロザムンドの死の迷宮』でも迷宮をさ迷う場面が楽しかったが、この作品では森の中での、獣も同然の凶暴な盗賊との熾烈な攻防、そして貧しい庶民にしてちんけな泥棒たちとのやり取りが楽しい。
 狡猾で強欲で有能、いつもアデリアに無理難題をふっかけるヘンリー二世が、相変わらず存在感がある。
 傑作。
 作者が亡くなったことにより、シリーズが第四作で終わってしまったことを、心の底から前年に思う。

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