FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ビッグ・ドライバー/スティーヴン・キング

ビッグ・ドライバー (文春文庫)

ビッグ・ドライバー (文春文庫)

 これは嬉しい衝撃である。当方がこの文章を書いている現在、2013年6月なのだが、すでに今年のベスト級がこの月に三作品も読んだ。すなわちネレ・ノイハウス『白雪姫には死んでもらう』、ギリアン・フリン『ゴーン・ガール』、そしてこのスティーヴン・キング『ビッグ・ドライバー』の三作品だ。
 正確に言えば、日本で『ビッグ・ドライバー』が出版されたのは、2013年4月だが、そこは目こぼしをお願いしたい。
 『ビッグ・ドライバー』には、表題作「ビッグ・ドライバー」と「素晴らしき結婚生活」の中篇の二作品が収録されているが、どちらも凄い。
 小細工は、一切ない。凝った筋立てですらない。見知らぬ男に拉致監禁され、陵辱され、殺されかかった女性作家の凄惨なリベンジと、長年幸福な結婚生活をしていた中年女性が、ある日唐突に夫が連続殺人鬼であることに気付く、ただそれだけの物語である。それだけの物語なのに、圧倒的に面白い。キングの小説を読むのは久しぶり……実は、数年前に『回想のビュイック8』を読んで以来……なのだが、彼の小説の巧みさ、読者を引き込む圧倒的な力を思い知らされる。
 キングとはしばらく離れていたが(ディーン・クーンツもそうだ)、また再び戻ってきたい。
 この『ビッグ・ドライバー』は「Full Dark, No Stars」という四編の中編を収録した作品集から「Big Driver」と「A Good Marriage」の二作品をセレクトし、一冊にまとめたもの。同じく「Full Dark, No Stars」から他の二作品をセレクトしたものが、『1922』として出版されている。こちらも要チェック。

1922 (文春文庫)

1922 (文春文庫)