FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ルーム205/ライナー・マツタニ監督

 

 なんらの予備知識もないまま、また失礼ながらあまり大きな期待はしないまま、よくある幽霊屋敷もの……もっと規模は小さく、幽霊の出る部屋……のホラー映画だと思って手に取ったのだが、存外質が高く、これは思わぬ拾い物だった。
 取り立てて派手なところや、目新しいところはないものの、画面は美しく、話そのものも丁寧な造りで好感が持てる。ホラーで落とすのか、ミステリで落とすのか、なかなか分からないのも魅力的だ。
 新生活を始めるべく、いまやたった一人の肉親となった父親のもとを離れて、大学の寮に入ったカトリン。しかし彼女が入居を決めた205号室は、いわくつきの部屋だった。以前の住人アニカが謎めいた失踪を遂げており、ときおり彼女の泣き声が聞こえてくるというのだ。
 PCに、アニカのビデオ日記が存在していた。ビデオ日記で見るアニカは生き生きとした美しい女性だった。新生活を心から楽しんでいるように見える。だが、次第にカトリンの周囲にアニカと思しき亡霊が現れる。そして、陰惨な寮生殺しが続く。「寮費が払えなくて逃げ出した」と学生からは言われているアニカだが、彼女の失踪の本当の理由はなんだったのか。
 またカトリンは、過去のある出来事が原因で、強いトラウマを抱え、神経を病んでいる。「アニカの亡霊」は実際に出現しているのか、あるいはカトリンの妄想に過ぎないのか。この神経を病んでいるという理由で、警察など公的機関にものを訴えようとしても、なかなか信じて貰えないのだ。
 アニカ失踪の謎解きと悪霊(……?)の脅威、それぞれミステリとホラー、双方の魅力が楽しめる。そしてアニカの真実の姿を分かるまでの過程もうまい。
 あまりにもありふれた「精神病院」エンドのみが、減点の対象だった。
 もともとデンマークのホラー映画を、ドイツでリメイクしたものだという。さらにリメイク権をサム・ライミ監督(!)が獲得したという。
オリジナルのデンマーク版もぜひ見たい。
 佳作。