FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

かくれんぼ・毒の園/フョードル・ソログープ

 耽美。頽廃。悲劇と。狂気への傾倒。死への憧れ。こうした向日性に背く題材に、子供の無垢さのへの崇拝と、一抹の感傷と、なんとも言えぬ甘さを付け加えたならば、それがソログープの作品となる。
 表題作である「かくれんぼ」、「毒の園」の他、五編が収録されている。
 ソログープはロシア象徴主義の詩人・小説家・戯曲家・随筆家だ。彼の著書を手に取るのは初めてのはずなのに、筆者の名前と、この本にも収録されている「光と影」の「影絵遊びに溺れていくうち、次第に狂っていく母親と少年」というストーリーにどこかで触れたことがある……と調べてみたら、中井英夫の吸血鬼小説の短編、「影の狩人」にこの「光と影」の話題がちらりと出てくるのだった。
 愛と死と狂気と幸福、本来なら相反するはずのこれら四つがしっかりと並んで立つ、「かくれんぼ」、「光と影」、「毒の園」あたりが面白かった。
 なかでも「毒の園」は、生まれたときから、復讐用の生きた武器として毒草園で育てられたがゆえ、接吻だけで人を殺せる美女が純真な青年と恋に落ちる話だ。もろにナサニエル・ホーソーンの「ラパチーニの娘」を想像させられる内容だが、「毒の園」は登場人物達が幸せな心のうちに破滅を受け入れる、甘美な恋物語である。暗いロマンティシズムに満ちた、そして感傷的な物語である。
 私は彼の詩を読んだことはないのだが、もし小説と同じ味わいを持つのならば、ぜひとも読んでみたい。