FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

隠し絵の囚人/ロバート・ゴダード

 かつて文春文庫から出版されていた『リオノーラの肖像』や、創元推理文庫から出版されていた『惜別の賦』ほどの典雅さは見られないが、まあまあ面白かった。ことに最後の最後まで伏せられている「エルドリッチの投獄の理由」には、膝を打った。第二次世界大戦時のIRA活動に深い関わりを持つ話と知り、あまりに馴染みのない世界なので物語にのめり込めるかどうか不安だったが、案外素直に没頭できた。
 辞職し、実家に戻った青年スティーヴンの前に、死んだと聞かされていた伯父エルドリッチが現れる。それも三十六年間アイルランドに投獄されていた元囚人として。伯父は収監の理由を語らない。
 ロンドンの弁護士から、絵画にまつわる、ある依頼を受けたときから、スティーヴンの眼前で殺人を含む奇妙な事件が起こり始めた。それは、伯父の過去と密接な関連を持っていた。
 物語は数十年前エルドリッチが関わった陰謀と、現在スティーヴンが巻き込まれた陰謀を同時に語る。終着点は同じく、前述の「エルドリッチの投獄、その理由」である。
 歴史絡みのサスペンスが好きなら、楽しめる一冊。