FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

赤く微笑む春/ヨハン・テオリン

 『黄昏に眠る秋』、『冬の灯台が語るとき』に続く、シリーズ第三作。イェルロフ爺ちゃんが帰ってきた!
 舞台はお馴染み、エーランド島。なんとか現在を生き延びようとしつつも、過去に縛られる人々、そして彼らの間で起きる悲劇を描いている。
 愛娘の重い病と身近で起きる事件、そして過去の記憶に苦しめられる、島の新しい住人。子供時代を島で暮らし、結婚して島に戻ったものの、現在は支配的な夫に苦しめられている女性。彼女にとって、島での子供時代の記憶は不思議で、懐かしいものだ。そして高齢者用施設を出た元船長イェルロフは、恥を感じつつも亡妻の日記を読む。現在と過去、それぞれ二重の時間を生きる彼らの運命の糸は、ある事件を契機にやがて絡み合っていく。
 エーランド島に引っ越してきたシングルファーザー、ペール。娘の病に苦しむ彼のもとに、疎遠にしていた父親ジェリーから連絡が入る。ジェリーはある意味有名人で、ペールの嫌な記憶はおおもと父親に絡まっている。ある日ジェリーは刺され、家に火がつけられる。ペールは父親の過去を追い、その過程で自分自身の記憶とも向き合っていく。
 ダニエル・アルフレッドソン監督による、シリーズ第一作『黄昏に眠る秋』の映画化も決まり、めでたい。
 あとは、アン・クリーヴス風に言うならば「エーランド四重奏」のラスト一曲を待つのみである。

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