FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

夏を殺す少女/アンドレアス・グルーバー

 謎とその解決が型に嵌まっているというマイナスポイントはあるが、生まれて初めて読んだオーストリアのサスペンス小説は、なかなか面白かった。非英米の、欧州のミステリの紹介が進んでいる昨今だが、まだオーストリアの出身の作家は日本では馴染みが薄い。であるにも関わらず、作者アンドレアス・グルーバーの個性もあろうが、読みやすかった。
 目を背けたくなるような事件(主人公の一人、エヴェリーンをかつて襲ったものも含め)が描かれているのだが重苦しさがなく、読みやすい。
 凄惨な過去を持つオーストリアの女性弁護士エヴェリーンは、名士達の「連続事故死」を追う。やがて気づく。これは事故ではない、殺人だ。
 一方ドイツ、ライプツィヒ警察の刑事ヴァルターは、病院での少女の不審死を調べていた。精神を病んだ少年少女達の施設、ここで生命を失った少女の過去にはなにがあったのか。
 ある人間達の醜行が描かれてから、犯人像と動機には察しがつくが、二人の主人公が顔を合わせるシーンには「ついに来た」と思わせる。
 同じ作者のペーター・ホガートもののサイコサスペンスも読みたい。