悪魔と警視庁/E・C・R・ロラック
これは少々期待値が高すぎたかもしれない。クラシック本格ミステリの香気は確かに漂わせているが、それ以上のはっとさせられるようなところがない。あるとしたら、E・C・R・ロラックというこれまであまり紹介の進んでいなかった、従って読者が手に取ることが難しかった作家の小説が、現代の読者にも入手が容易になったことか。
あまりの冒頭の場面の甘美さ、舞台の美しさに、真相を知ってみると「そんなことか」と思わず力が抜けてしまうような作品である。
濃霧のロンドン。帰宅途中のマクドナルド首席警部は、引ったくりから女性を救った。翌日、車の後部座席からメフィストフェレスの衣装をまとった男の死体が発見された。この男は誰?
現在、E・C・R・ロラックの作品で『悪魔と警視庁』以外に、手に入りやすいものは、国書刊行会から出版されている世界探偵小説全集の18巻『ジョン・ブラウンの死体』、そして長崎出版の海外ミステリGem Collectionの一冊、『死のチェックメイト』である。前述の通り、『ジョン・ブラウンの死体』がお勧め。
同じく東京創元社から出版されるという『鐘楼のコウモリ』に期待。検索して偶然知ったことだが、『鐘楼のコウモリ<bats in the belfry>』には、「頭が混乱する」という類の意味があるそうな。どんなミステリなんだろう。
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