FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

夜霧は愛をさらって/コニー・ブロックウェイ

夜霧は愛をさらって (ライムブックス)

夜霧は愛をさらって (ライムブックス)

 必ずしも本国での発表順の通りとは限らないものの、『漆黒の乙女の吐息に』、『すみれ色の想いを秘めて』と立て続けに、ヒストリカルロマンスの傑作が邦訳されているコニー・ブロックウェイ。この初期の作品だという『夜霧は愛をさらって』もとても面白かった。どれもだらだら続かず、一冊で潔く終わるのがいい。
 ヒーローとヒロインは、昼間は元軍人と美しき未亡人として社交界で顔を合わせ、夜ともなれば腕利きの女怪盗と、内務省の密命を受けた諜報員として追いつ追われつする関係だ。しかも、ヒーローは未亡人と女怪盗が同一人物だと知らず、一度に二人の女性に惹かれていると思い込んでいる。
 この設定だけで、すでに成功は半分約束されたに等しい。
 また悪役の描写も冴え渡っている。ヒロインとヒーローの傍らに一人ずつ、とりたてて肉体的な暴力を使わないにも関わらず、他人の魂を殺す達人がいる(いた)のだが、そのエピソードが引き起こす嫌悪感には凄まじいものがある。
 十九世紀のロンドン。上流階級を騒がせていたのは、貴婦人たちの宝石を巧みに盗む泥棒「レックスホールの生霊」。英国内務省の大物から盗賊の追跡を命じられたスパイのセワードは、女怪盗にあと一歩のところで迫るが逃げられてしまう。そののち彼は、社交界で美しい未亡人アンと知り合い、互いに惹かれ合う。「レックスホールの生霊」とアンが同一人物だと知らずに。アンも戸惑いつつも、自分を追う男に惹かれてしまう。
 傑作。

漆黒の乙女の吐息に (ライムブックス)

漆黒の乙女の吐息に (ライムブックス)

すみれ色の想いを秘めて (ライムブックス)

すみれ色の想いを秘めて (ライムブックス)

↑どちらも傑作