FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

愛をささやく夜明け/クリスティン・フィーハン

愛をささやく夜明け (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション フ 13-1 闇の一族カルパチアン1)

愛をささやく夜明け (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション フ 13-1 闇の一族カルパチアン1)

 久しぶりにパラノーマル・ロマンスを読んだ。「闇の一族カルパチアン」シリーズ第一作だ。
 カルパチアンとはカルパチア山脈付近に棲まう、人ならぬ一族である。不老不死に近いが、死なないわけではない。人の血を啜るが、殺してしまうわけではない。そして狼や霧や鳥に変身する力がある。
 ただこの一族の男は、二百年ほどを生きると色彩と感情を感じる力を失い、世界は灰色に変わる。このとき堕落し、嗜虐と殺戮を好むようになったものがヴァンパイアと呼ばれる。カルパチアンがヴァンパイアにならないためには、「ライフメイト」という生涯の伴侶を見つけなければならない。だがカルパチアンの女性は極端に少なく、人間の女性をカルパチアンに転化させるのは非常に難しいのだ。
 「ライフメイト」という単語がちょっと気恥ずかしいが、なかなか面白かった。ストーリー展開が速く、全体的に力強く、血生臭い場面も数あり、ラブストーリーとしては官能的でもある。
 テレパシー能力を持つゆえ、孤独な人生を送ってきたアメリカ人女性レイヴン。彼女は休暇で欧州に出かけたおり、やはり孤独な魂の存在を知る。カルパチアンの君主ミハイルだ。惹かれ合う二人だが、レイヴンと同じ旅行客の中に、ヴァンパイアの、カルパチアの殲滅を狙う狂信者達が潜んでいた。両者の間での熾烈な戦いが始まる。
 カルパチアンの女性はなかなか生まれず、それゆえ女性はとても大切に扱われるという設定にも関わらず、ミハイルの妹、いわばプリンセスのノエルが、恋愛という意味でも、対狂信者という意味でもあまり無防備に扱われすぎという点がきになるが、ごく普通のヒストリカルロマンスばかりを読んでいる身としては色々と新鮮だった。
 本国では、すでに二十作を超えるシリーズだという。日本でも、第二作『愛がきこえる夜』、第三作『夜霧は愛とともに』が出版されている。
 

愛がきこえる夜 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

愛がきこえる夜 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

夜霧は愛とともに (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

夜霧は愛とともに (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)