遮断地区/ミネット・ウォルターズ
- 作者: ミネット・ウォルターズ,成川裕子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/02/27
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ミネット・ウォルターズ版『被害者を探せ』。むろんのこと『犯人を探せ』でもある。貧しい団地で起こった暴動。死者が三人出たという記事が、冒頭で明かされる。一体誰が死ぬのか。そして誰が殺すのか。むろん理性を失った暴徒が殺したのだ、と記事からは読めるけれど、作者のことだから、「そう見せかけて、実は……」という可能性も疑われる。
訳者への解説にもあるように、「現在進行形」の物語である。『病める狐』も現在進行形だが、あれは登場人物達の過去が大きく影を投げかけてくる物語だった。この『遮断地区』は過去よりも、現在のサスペンスにかなりの比重が割かれている。これはミネット・ウォルターズとしては、少なくともこれまで邦訳された彼女の作品としては珍しい類のものである。
バリケードを幾つか張れば、完全な閉鎖空間となる、貧しい団地。暴動が起き、孤立したその団地のさらに一室に、医師ソフィはある父親と息子によって監禁された。この親子、どちらかが、小児性愛好者らしい。この親子が、団地に引っ越してきたことが、そして役人が団地の住人にそのことをつい漏らしてしまったことが、暴動の発端だった。「新しい住人が、小児性愛好者……」と聞いた、幼い子を持つ若いシングルマザーが、初めはデモをするつもりだったのに、それがあっという間に暴動になってしまった。
ソフィーはどうすれば生き延びることができるのか。老いてはいるが凶暴な父親と、ひどく従順なその息子。どちらを味方につければ、生き延びることができるのか。もちろん、暴動からも身を守らなければいけない。
そして登場人物の中で「死ぬ三人」って誰だ。
おまけに少女失踪事件も絡む。
一気に読み、そしてひどくぐったりする。とても強烈なサスペンスと、とても嫌な読後感、その双方を持ち合わせた作品。情け容赦のない一冊である。
- 作者: パット・マガー,中野圭二
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- 作者: ミネットウォルターズ,Minette Walters,成川裕子
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