跡形なく沈む/D・M・ディヴァイン
- 作者: D・M・ディヴァイン,中村有希
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/02/27
- メディア: 文庫
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邦訳されていない作品も、数少なくなってきたディヴァイン(楽しみが少なくなってきたようで残念)、。
没後に発表された『ウォリス家の殺人』を除けば、これが最後の作品となる。いわば「白鳥の歌」である『ウォリス家の殺人』よりも、こちらの方が「白鳥の歌」らしい。ちょっぴり苦しげなのだ。
登場人物が癖のある人間ばかりで、今一つ誰に感情移入したらよいのか分からない、ということもあるだろう。
若く美しい娘ルースの母親が死んだ。ずっと憎み続けた母親だった。ルースは父親のついてはなにも知らない。己を軽んじてきた人々への復讐の念に冷たく燃えるルースは、スコットランドへの小都市へと向かう。そこに自分の出生と関わる人間がいるはずだ。くだんの小都市は平和な田舎、というわけではなく、閉鎖的な環境の中で、愛憎やら権力欲やらが絡む生臭い人間関係がとぐろを巻いていた。
やがてある女性が死に、別のある女性が失踪する。事件関係者は疑惑に苦しむのだ。
と書いたものの、登場人物達が関係者の中で、ある人間を強く疑わないのがやや不自然である。現在置かれた立場から察してこの人がもっともうさんくさい人間の一人だろうに。
ものすごく下手だ、というわけではないが、『悪魔はすぐそこに』、『災厄の紳士』、『三本の緑の小壜』、『ウォリス家の殺人』など、東京創元社で初めて訳され、出版された他の傑作佳作群と比べると、やや小粒である。
- 作者: D.M.ディヴァイン,D.M. Devine,山田蘭
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