FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

小鬼の市/ヘレン・マクロイ

小鬼の市 (創元推理文庫)

小鬼の市 (創元推理文庫)

 本格ミステリにせよ、サスペンスにせよ、際立って美しい文章で、暗く甘美な世界を描いてきたヘレン・マクロイ。比較的明るい雰囲気をたたえ、最後に明かされるある秘密にはユーモアを感じさせるこの『小鬼の市』は、彼女の異色作にして、快作である。
 もう一つの新鮮な試みとして、『ひとりで歩く女』のウリサール署長とウィリング博士、マクロイが創造した二大探偵が共演することになるのだが、それがどういった形で共演するのかは、読んでからのお楽しみ。この作品だけ読んでも十分に楽しめるが、以前からヘレン・マクロイの読者だったという人はもっと楽しめるはず。
 カリブ海の島国サンタ・テレサに流れ着いた、謎めいた男性スターク。アメリカの通信社の支局長ハロランが奇妙な状況で亡くなり、そのあとを継いだスタークはハロランの死の謎を追うことになる。それは連続殺人事件の幕開けだった。死者が残した言葉、「小鬼の市」とはどういう意味を持つのか。
 スパイ小説風サスペンス。ヘレン・マクロイの創造世界の一つの側面に触れることができ、嬉しかった。この『小鬼の市』のみならず、スコットランドを舞台にした密室もの゜The One That Got Away゜も訳されると聞く。大変楽しみである。


ひとりで歩く女 (創元推理文庫)

ひとりで歩く女 (創元推理文庫)