FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ヴェノム 毒蛇男の恐怖/ジム・ギレスピー監督

ヴェノム 毒蛇男の恐怖 [DVD]

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 いかにもキワモノめいた邦題だが、実際にはずっと落ち着いた、一種の上品さえ感じさせるスラッシャー映画である。アメリカ南部ルイジアナ州を舞台にしており、湿気を帯びた特有の風土が美しく、話に絡むブードゥーの信仰の描写も効果的だ。ブードゥー絡みのホラー映画と言えば、イアン・ソフトリー監督の傑作ゴシックホラー映画『スケルトン・キー』があるが、あの作品とはまた異なるアプローチがされている。
 ルイジアナ州の田舎町。夜。ブードゥーの祈祷師の老女が、ある土地の土中から、スーツケースを取り出そうとしていた。そしてその帰り、交通事故に遭った。町に住むある男が命がけで助け出そうとしてくれたが、結果、男と祈祷師は死に、男は人間の血肉を生贄として求める、悪霊として蘇ってしまう。
 そして小さな町に絶叫と虐殺の嵐が吹き荒れる。
 墓地にそよぐ柳の木、柳に吊るされた鈴が鳴り、ヒロインがふと見ると道路を死んだはずの男の車が走っているだとか、かつて老女が住んでいた廃墟めいた屋敷だとか、ロウソクの灯りに浮かぶブードゥーに儀式の道具だとか、印象的な場面が幾つもある。
 体を張って人を助けようとした男性が殺人鬼となってしまう無残さや、この男と主役の一人である少年との関係、それによって作中に生みだされる緊張もいい。
 ゴア描写は結構激しい。ホラー映画に慣れていない人ならば、トラウマになるレベル。
 傑作とまで言えないが、まだ見ていないホラー映画のファンには薦めたい作品。

スケルトン・キー [DVD]

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↑傑作ゴシックホラー映画