FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ジャッカー/エリック・レッド監督


 十一歳の少年トラヴィスが老若の殺し屋コンビ、コーエンとテイトに誘拐された。少年は自分ではよく分からないまま、マフィアの犯罪を目撃していたのだ。彼を守ろうとした、両親とFBI捜査官は撃たれ、動かなくなった。
 二人の殺し屋たちに車で拉致され、なにを見たのか詳しく尋問されるため、コーエンとテイトの依頼人のもとへと連れていかれることとなった。一夜の、長い長いドライブが始まる。
 実によくできたロード・サスペンス・ムービー。主要登場人物は三人(しかも一人は幼い子供だ)だけ、舞台は前述の通り、「一夜のドライブ」に限られている。
 この限定された舞台の中で、トラヴィスは生き延びるため、車から脱出するため、ひたすら知恵を尽くす。しかしトラヴィスを助けようとする、ドライブの中途で出会った警官たち大人もあっさりと殺されていくため、それは容易なことではない。
 殺し屋コンビの性格は対照的で、この場でトラヴィスを殺そうと主張する若いテイトと、ベテランで自分の流儀にこだわるコーエン。テイトは短気ですぐ暴力をふるい、その分理性を失いやすい。コーエンは冷静だが、老いて体に不調が出ている。 二人の特徴と、仲の悪さに気付いた少年は、コーエンに取り入り、テイトを挑発し、二人を揺さぶり脱出のチャンスを作っていく。
 アクションは現在の映画と比べればまだ地味なものだが、目的地へと辿り着くまでのタイムリミットや、タイプの異なる二人の殺し屋の対立がもたらす緊迫感、少年の誘拐という目的のためならば邪魔になる人間をあっさり殺す殺し屋たちの酷薄さ、そして最後に見せた「老殺し屋の執念」など見所はいくつもある。
 忘れがたい傑作。
 この映画でエリック・レッドに脚本と監督を務めているが、彼が脚本を書いたものの中で、ロバート・ハーモンが監督のサスペンス映画『ヒッチャー』、キャスリン・ビグロー監督の吸血鬼映画『ニア・ダーク 月夜の出来事』もまた傑作である。

↑どちらも面白い。