FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

優しい午後にくちづけて/リサ・クレイパス

優しい午後にくちづけて (ライムブックス)

優しい午後にくちづけて (ライムブックス)

 「ザ・ハサウェイズ」シリーズ第五作にして、最終巻。シリーズ中途の『黄昏にほほを寄せて』と『純白の朝はきらめいて』がなんともかったるい、気がぬけたようなロマンス小説だったので不安を感じていたが、さすがは大家、最後で見事に持ち直した。
 ハサウェイ家の末っ子、ベアトリクス。動物好きで、時折自分がしでかしてしまう盗みに悩んでいた彼女のロマンスの相手は、隣人クリストファー大尉。ベアトリクス自身の盗癖の謎も明らかになる。
 ベアトリクスは、かつては傲慢な美男子クリストファーが好きになれなかった。しかし、彼が戦場からベアトリクスの友人に出した手紙に何気なく返事を出したときから、二人の文通は、二人の恋は始まった。
 戦争はかつての軽薄な貴公子をすっかり変えていた。やがてクリストファーは英雄として帰国するが、彼と顔を合わせてもベアトリクスは本当のことを言うことができない。おまけにクリストファーは戦場で下したある決断に今でも苦しめられていた(これがうまくあらすじに絡んでくる)。
 犬のアルバートをはじめとした動物を使い方はややあざといと感じさせるところもあるが、やはりうまい。アルバートは戦場では犬の兵士として活躍するが、クリストファーに連れられて英国に帰ってからも、主人同様戦争で受けた心の傷から立ち直ることができずにいる。平和になってからも敵の攻撃が怖く吠え続け、周囲の人間から冷たく扱われるようになるのだ。
 このアルバートと、歴史上に実在する某人物とが顔を合わせる場面も微笑ましい。そう言えば、アルバートという名前は……(以下ネタバレ防止のために略)
 レオとキャムなど、相変わらずハサウェイ家の面々とのやり取りも楽しい。
 大団円に相応しい傑作。

夜色の愛につつまれて (ライムブックス)

夜色の愛につつまれて (ライムブックス)

夜明けの色を紡いで (ライムブックス)

夜明けの色を紡いで (ライムブックス)

黄昏にほほを寄せて ((ライムブックス))

黄昏にほほを寄せて ((ライムブックス))

純白の朝はきらめいて (ライムブックス)

純白の朝はきらめいて (ライムブックス)