FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

カンパニュラの銀翼/中里友香

 

カンパニュラの銀翼

カンパニュラの銀翼


 ゴシックロマン好き、耽美小説好きのハートの真ん中を打ち抜かれた。
 勝手な想像だが、皆川博子の愛読者も結構な割合で、このエレガントな小説を気に入るのではないだろうか。
 耽美的な愛憎劇、妖しい魔人、近親相姦、同性愛のそこはかとない香り、永遠の生命、ドッペルゲンガー、一族の歴史にまとわりつくなにか……実に優雅で頽廃的なゴシック小説。終盤には、冒険小説の趣もある。
 一九二〇年代、イギリス。血のつながらない妹クリスティンのため、資産家の息子の身代わりとして大学へと通うエリオット。彼の眼前のシグモンドという美貌の怪人が現れたとき、彼ら兄妹は途方もない運命にさらされることとなった。
 ある濃い血のもとに生まれた貴公子シグモンドは、放浪を続けながら、ある男との対決を繰り返していた。同時に、ある一つの血族に執着していた。
 エリオットと「妹」クリスティンとの関係、エリオットとシグモンドの関係、シグモンドと「姉」マルグレーテ=アンナの関係、そしてシグモンドとベネディクトの関係、どれもがめくるめくほど魅惑的。
 第2回アガサ・クリスティー賞受賞作。