FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

冥闇/ギリアン・フリン

冥闇 (小学館文庫)

冥闇 (小学館文庫)

 ミステリには全く感動を求めない性質だが、それでも感情移入できる登場人物が極端に少ないのはつらい。かろうじてベンの少年時代がそれだが、彼は自分の家族を、一人を除いて皆殺しにしたと言われる人物だ。
 リビー・デイは七歳のとき、母とふたりの姉を殺された。父親は家に寄りつかず、いないも同然の人物だった。リビー・デイが人殺しとして告発したのは、十五歳の兄のベン。彼は悪魔崇拝者で、家族を生贄に捧げたのだとされた。
 成長してからもリビーは、無気力な生活から脱することができなかった。殺人事件マニアのサークルに招かれた彼女は、金のために自分の家族の事件について語り始める。同時にそれは、リビーの事件への再考、そして自分の人生を立て直す契機への第一歩だった。
 並行して、苦しい生活を送る少年ベンの、「事件」までの日々と、その真相が描かれる。
 とにかく重苦しい物語、現在のヒロインも、過去のベンも、そして結構唐突に明かされる真相も。物語に牽引力が乏しく、登場人物にもほとんど感情移入できず、読みながら「早く終わってくれないかな」と感じてしまった一作。