FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

巡礼者パズル/パトリック・クェンティン

巡礼者パズル (論創海外ミステリ)

巡礼者パズル (論創海外ミステリ)

 思っていたよりもずっと楽しめた。タイトルに「パズル」がつき、ピーター・ダルースを主役とした<パズル・シリーズ>の六冊目で、これまで邦訳されたことがなかった作品である。
 邦訳されたことがなかった、というのは「邦訳される必要はなかった」のではないかと危ぶんだが、そんなことはない。ただ、『迷走パズル』、『俳優パズル』でのダルース&アイリスの出会いやその後の交際の様子を読んだばかりなので、時の流れの残酷さを感じさせる。
 戦争ですっかり人が変わり、妻アイリスに逃げられたダルース。彼はアイリスを追ってメキシコへと渡る。ところがアイリスには、すでに作家のマーティンという恋人がいた。ショックを受けるダルース。しかしダルースも、マーティンの妹マリエッタに惹かれていく。
 錯綜とする人間関係の中で、マーティンと離婚問題で揉めていた妻サリーが死んだ。一見事故のように見えたが、事件を思わせるあやしい証拠が幾つもあった。
 あらすじだけ書くとメロドラマのようだが、登場人物同士の告発合戦(むろん容疑者にアイリスも含まれる)あり、真相もなかなか決まっており、ミステリマニアを楽しませてくれる。
 傑作だとか、<パズル・シリーズ>の代表作だとかは言えないけれど、まずしお勧め。
 , <パズル・シリーズ>はこれで幕を下ろすが、ダルースとアイリスを主役に据えたミステリはまだ二冊あり、そちらの邦訳、新訳が待たれる。
 

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