FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

昏い季節/チェルシー・ケイン

昏い季節 (ヴィレッジブックス)

昏い季節 (ヴィレッジブックス)

 美貌の連続殺人鬼<ビューティ・キラー>ことグレッチェンと、彼女に魅入られた刑事アーチーのミステリと毒気たっぷりのロマンスを描いた≪ビューティ・キラー≫シリーズの番外編。アーチーとともに、新聞記者スーザンも活躍する。
 オレゴン州ポートランド。洪水に襲われ、厳戒態勢が敷かれる都市で、奇妙な死体が連続して見つかる。溺死に見えたが、溺死ではない。川にはいないはずの、ある特殊な生き物の毒で生命を奪われたのだ。
 アーチーは増水する川の中から、一人の幼い子供を助け出すが、その少年は病院から忽然と姿を消した。この連続毒殺事件と少年の失踪、そして何十年も前に同じ場所で起き、多くの人命を奪った洪水とは、どのような関連があるのか。
 スーザンは、今回出張っている。仕事を巡ってトラブルが発生し、新たなペット(?)が眼前に現れ、アーチーへの思慕で心が揺れ、異様な事態の最中に起きた連続毒殺事件を追う。
 アーチーは、子供を荒れ狂う川の中から助けたり、真犯人と対峙したりと大活躍なのだが、最新の人気アトラクション<ビューティ・キラーの恐怖の館>の中では人形として、「巨大バービー人形のような」グレッチェンの人形から拷問を受けている。生命を張って子供を救ったときも、マスコミから≪ビューティ・キラー刑事≫と呼ばれている。有能で勇敢な刑事なのに、すっかりシリアルキラーの付属品の扱いだ。アトラクションとか、新聞とか、訴えなくていいのか、アーチー。
 特異な状況の中で、特異な生き物を使って猟奇的な殺人事件を起こすシリアルキラーものとしてなかなか楽しめた。子供の扱いも最後までどうなるか分からず、はらはらとした。
 ……あのペットは、今後もまた出てくるんだろうか。
 ……グレッチェンは、また脱獄するんだろうか。