FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ゴースト・ハント/H・R・ウェイクフィールド

ゴースト・ハント (創元推理文庫)

ゴースト・ハント (創元推理文庫)


 妙だなあ。夕陽のあたっているところが、みんな眼玉みたいに見える。そいつがどれもこれも僕を見つめているみたいだ。
 
 前述の文章は、作中に収められている「目隠し遊び」から。これは以前にも読んだことがあり、またほんの数ページの短い作品なのだが、再び恐怖することができた。良くできた幽霊屋敷小説である。
 面白かった。美しい幽霊屋敷がたくさん出てきて、満足できた。「幽霊屋敷」と言っても色々なバリエーションがあり、新たに手にした家が呪われた屋敷だったという定番のものから、悪意ある主人公が屋敷に怪異を招いてしまうもの、幽霊屋敷に足を踏み入れたリポーターが実況をしながら狂っていくものなど色々とある。
 18篇が収められているのだが、「目隠し遊び」、「ゴースト・ハント」、「赤い館」の三篇がもっとも楽しめた。すでに過去の書物に収録されているものばかりで、少々恥ずかしいのだが、これもまたこの三篇がウェイクフィードの中でも傑出した作品の証拠だと考えたい。
 上品で落ち着いた筆致で描き出される美しい風土や家屋敷と、その中で起こるひどく異常現象の対比が、当方には好ましい。やはり美しい家、あるいは趣のある廃墟には、恐怖がよく似合う。
 「これからなにか外国の怪談を読みたい」という向きにも、「すでに怪談マニアだ」という人にも薦められる怪談集。