誘惑は愛のために／アナ・キャンベル

誘惑は愛のために (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

　一風変わったヒストリカルロマンスで知られるアナ・キャンベル。この『誘惑は愛のために』もまた濃厚な官能描写と、通常のロマンス読者なら思わず心が折れてしまいそうなシビアな展開が待ちかまえている。
　オリヴィアは美貌と知性を併せ持つ高級娼婦。しかし幼年期からの悲惨な体験ゆえ、心には男性不信と憎悪を抱いていた。また誰にも知られていない秘密だったが、肉体的にも不感症であった。
　外交官エリス伯爵ジュリアンに見染められ、愛人となる契約を結ぶオリヴィア。ジュリアンとオリヴィアは、体と心で愛し合うことができるかのように見えた。
　が、アナ・キャンベルの作品なので、そう簡単には幸福は訪れない。貴族と高級娼婦の、戯れの恋ならぬ、真剣な恋はそう簡単には実らないのだ。世間のみならず、ジュリアンの心の中にも、オリヴィアに対する偏見はあるのだから。
　傑作。しかし、色々な意味でハードだった。

罪深き愛のゆくえ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

↑ヒロインがヒーローによって監禁される。

囚われの愛ゆえに (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

↑ヒロインとヒーローはともに監禁されている。

その心にふれたくて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

↑ヒロインとヒーローはともに監禁されていた過去がある。しかし、これが一番明るい話。