波に消された記憶/リズ・リグビー
- 作者: リズリグビー,Liz Rigbey,林香織
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
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ミステリ絡みで、好きな言葉が幾つかある。
一つは、アガサ・クリスティーの「過去の罪は長い尾を引く」というもの。
もう一つは、ケイト・モートンの文章の一部で「記憶は信用ならないこと、偏向した歴史としての性格を帯びること」である。
この文言に象徴されるよう、遠い過去に起きた殺人、追憶の殺人テーマも大好きだ。それが家庭内のものであれば、なおさらだ。
ある家族の秘密、そして記憶が絡む惨劇という点で、このミステリを読んでいて思い出したのはジョアンナ・ハインズ『殺す鳥』、そこに血と地に縛られる人々という点を付け加えればソフィ・オクサネン『粛清』も挙げられる。
ニューヨークで働くキャリアウーマン、ルーシーは生まれて間もない息子が突然生命を失ったという悲痛な過去を持つ。哀しみを紛らわせるように働く彼女の元に、敬愛する父が殺されたという知らせが届く。
父は、閉鎖的な宗教団体で育てられ、単身そこを脱出し、独立して家庭を築いたというと聞いている。
母は、ロシアからの移民で、ロシアからの移動の最中、幼い赤ん坊だった弟を失った過去があると聞いている。そして、ルーシーが生まれたのち、母は発狂した。
久しぶりに舞い戻った故郷で、ルーシーは姉夫婦や伯母、従兄弟と再会する。ルーシーは父母のルーツを改めて探ろうとする。
死者に対する愛憎、記憶の中の惨劇、ややこしい人間関係、そして家族の中の秘密、犯人の正体。すべてがぴったりと好みにあうミステリだった。
秀作。
- 作者: ジョアンナ・ハインズ,神林美和
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/04/27
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- 作者: ソフィオクサネン,Sofi Oksanen,上野元美
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/02
- メディア: 単行本
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