FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

光輝く丘の上で/マデリン・ハンター

光輝く丘の上で (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

光輝く丘の上で (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 『きらめく菫色の瞳』、『誘惑の旅の途中で』に続くロスウェル・シリーズ第三作。『きらめく菫色の瞳』は途中で投げ出した作品で、『誘惑の旅の途中で』はなかなかの秀作だった。期待と不安、相半ばする気持ちで手に取ったが、これは『誘惑の旅の途中で』と同じ、秀作だった。
 兄ティモシーのしでかした経済面での犯罪行為(本人はとっとと外国にトンズラ)で、被害者達から恨みを買っているロングワース一族。ティモシーの妹ロザリンは、兄に恨みを持つ貴族の手によって、いかがわしいパーティーでオークションにかけられることとなった。
 紳士とは名ばかりの紳士の集まったパーティーで、たった一人紳士らしい振る舞いをした男性がいた。平民から身を起こした実業家カイルだ。以前からロザリンに惹かれていた彼は、高値でロザリンを買い、その場から救い出すと、安全な場所まで送り届けて立ち去った。
 この白馬の騎士と、哀れな姫君は当然惹かれ合うのだが、そこにろくでなしの兄ティモシーが絡む。ティモシーは罪を償うことなどさっぱり考えておらず、ロザリンも血肉をわけた兄ゆえ、あっさりと切り捨てることがなかなかできないのだ。
 実に憎たらしい兄貴である。訳者あとがきにもあるので、軽くネタバレしてしまうが、勧善懲悪に終わることの少ないマデリン・ハンターの作品の中で、この『光輝く丘の上で』は珍しく悪人どもの上に鉄鎚が下される。
 読者は、カイルとロザリンのロマンスを楽しむとともに、シリーズ第一作からヒロイン達に迷惑をかけ通しだった(『誘惑の旅の途中で』のヒロインは、身内ではないのでやや異なるが)ティモシーが、どんな目に遭うかと、わくわくしっぱなしだった。少なくとも当方はそうだった。
 次はイースターブルック侯爵当人がヒーローだろうか。

きらめく菫色の瞳 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

きらめく菫色の瞳 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

誘惑の旅の途中で (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

誘惑の旅の途中で (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)