FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

湿地/アーナルデュル・インドリダソン

湿地 (Reykjavik Thriller)

湿地 (Reykjavik Thriller)

 のっけから矛盾するようなことを言う。良くできていると感じるが、好きにはなれないタイプの作品だ。あまりネタバレにならないように書くが、この座り心地の悪さと、かすかな不快感はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『灼熱の魂』を観賞したときと似ている。つまり、「母性に負担をかけすぎだろうよ」。
 アイスランド、十月の長雨のレイキャヴィク。北の湿地にあるアパートで、一人の老人が殺された。ありふれた犯行だと思われたが、その場には、奇妙な、そして断片的なメッセージが残されていた。調べて行くと、かつてホルベルクは性犯罪で訴えられかけたことがあったが、担当した警察官の態度の悪さが一つの原因で、不起訴になっていた。ホルベルクの机の引き出しに入っていたのは、四歳で病死した少女の墓石の写真、少女の母親は自殺している。そして、その母親はかつてホルベルクを訴えようとした女性だった。
 シンプルで、謎解きも楽しめる警察小説。警察小説というジャンルが苦手な当方にも、前述の苦々しさを除けば楽しめた。アーナルデュル・インドリダソンの作近で、初めて邦訳されたものだが、エーレンデュル・スヴェインソンのシリーズものとしては三作目。シリーズ五作目『緑色の女』も、東京創元社より近く出版されるとのこと。

灼熱の魂 [DVD]

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