FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

殺す鳥/ジョアンナ・ハインズ

殺す鳥 (創元推理文庫)

殺す鳥 (創元推理文庫)

 謎めいた日記、死者に対する愛憎、記憶の中の惨劇、ややこしい人間関係、そして家族の中の秘密。
 なにもかもが好みにぴったりだ。こういうサスペンスが読みたかった。
 夏のコーンウォール。世界的に有名な詩人キルスティンは死んだ。事故と判断されたが、音楽家を志す娘サムは信じなかった。なぜか母の日記と、そして母の詩が消えている。警察に相手にされなかったサムは、自分自身で調査を始める。
 物語は現在と過去を行きつ戻りつしつつ、人と人との間の緊張が次第に高まっていき、やがて破滅にいたる様子を、優雅に描く。それだけで終わらず、そのあとの二転三転する真相もぬかりなく描く。
 ジョアンナ・ハインズはかつて扶桑社ミステリーから『五番目の秘密』が一冊だけ邦訳されているのだが、そちらよりはるかに面白かった。
 たおやかでいて、そして残酷なサスペンス。ジョアンナ・ハインズのみならず、こういったサスペンスが、もっと翻訳されれば嬉しい。

五番目の秘密 (扶桑社ミステリー)

五番目の秘密 (扶桑社ミステリー)