迷走パズル/パトリック・クェンティン
- 作者: パトリック・クェンティン,白須清美
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/04/27
- メディア: 文庫
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パズルシリーズ、第一作。ピーター・ダルースとそのパートナー、アイリスが初めて読者の前に姿を現した一作だ。
劇場の火災で妻を失って以来、アルコールに溺れ、精神の均衡を失った患者が集う療養所に入院している元演劇プロデューサー、ピーター。退院の日もそろそろ近付いてきたというころ、ピーターは唐突に警告の声を聞く。逃げろ、と。ピーターが驚愕したことに、その声はピーター自身のものだった。ピーターは声を発していないにも関わらず。
自分の病が進行したかと危ぶむ彼に、所長レンツ博士は、リハビリがてらに探偵行為を命じる。療養所では、同じようなおかしな事件が多発していたのだ。患者同士なら話がしやすいと。もっとも狂気といっても、一通りではない。患者の一人一人に過去があり、性格があり、それに合わせた精神的な病の症状があり、それに合致した論理があるのだ(山口雅也のミステリのようだ)
探偵行為を進めるうち、ピーターは父親が自殺を目の当たりとし、鬱となった女性アイリスに惹かれていく。
舞台や登場人物達の身の上は結構悲惨であるにも関わらず、軽やかさとユーモアが漂っていて、読みやすい。なにせシリーズ第一作ゆえ、当時の読者の中には、「レンツ博士が犯人だと信じていた人物が真犯人」だと密かに考えていた人もいるのではないだろうか。
愛すべく一作。
シリーズ第二作、そして最高傑作と名高い『俳優パズル』が待たれる。
- 作者: パトリッククェンティン,Patrick Quentin,森泉玲子
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2005/10
- メディア: 文庫
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